シーン4
パントマイムのような人の影。
弾むトランペットの歯切れ良い音楽に合わせて映像が進む。
シーン2と同じように、映像に合わせて独白(ナレーション)。

(映像)
校舎の屋上の隅に並ぶ靴、靴、靴。
コマ撮りでひとつづつ靴が増えてゆく。音楽に合わせて。
靴の上に並ぶ遺書が増えてゆく。音楽に合わせて。

智子声のみでかぶせて
「ちょっと前から大学で流行しはじめた悪ふざけ」

(映像)
カメラ固定。
屋上を泥棒歩きでちょこちょこ歩いてくる帽子の男。
カメラの前まで小走りに走ってきてケンケン笑いをする。「シシシシシシ」
古いスニーカーと遺書をコートの中に隠して屋上の隅に。
目立つようにスニーカーと遺書を置いて、再びカメラの前に戻ってくる。再びケンケン笑い。
「シシシシシシ」
カメラ、置かれたスニーカーと遺書に寄る。ぐぐっと。近づく。

智子声のみ
「もはや悪ふざけなのか、何かのおまじないなのか、新しい習慣なのか分からない現状
…けれど、誰かが確実に置いている古い靴と偽物の遺書」

(映像)
再びさっきと同じ位置にカメラ。
上手より慌てものの女登場。
ほけーっと屋上を歩きまわる女。やがて偽物の靴と遺書に気付き、慌てる、ふためく。
叫びまわる、慌てまわる女。画面を右から左、左から右に走り抜けつづける。

智子声のみで
「そしてそれに引っかかる人」

音楽やがてフェードアウト。



シーン5

再び部室の中。
同じ三人。またくだらない話をしている。音楽が流れている。
本を読んでいた智子が急に話に加わってくる。

智子
「ねえ、ちょっと、ちょっと聞いて。
ブラックジョークってナニ?どんなの?」

トッペイ
「なに、急に」

智子
「だからァ、ブラックジョークよブラックジョーク。ジョークは分かるとして、ブラックってナニ?黒?」

水道橋(話に割り込んでくる)
「(ぼそぼそとテンション低く)先月うちのねーちゃんがさァ、リンカーンに乗ったやつらにナンパされたのね。
ねーちゃん22にもなってバカだからさあ、ほいほいついてったわけよ。そしたらさ…
(少し間を置いてぽつんと)
輪姦されてやんの。
…リンカーンで輪姦。どうよ?」

智子、トッペイ、汚いものを見るように水道橋を見る。やがて智子がおずおずと口を開く。

智子
「それは…ナニ?」

水道橋
「だからブラックジョーク」

トッペイ
「死ね」



シーン6

数日後。
悩み多き女の飛び降りた校舎の屋上から下を見下ろしているトッペイ。
すこしだけだけれど、人が行き来している地面の道。
カメラ、ズーム引いてトッペイを映す。

トッペイ独り言
「うーん。こっから落ちたら死ぬよね、実際。
そりゃやっぱ死ぬって。そりゃ」

(トッペイの向こうで男子学生が電話を取る。校舎の向かいにある部室棟を眺めながら大きな声で話し出す)

男子学生
「へえ。もしもし?聞こえる。うん。すげえ、見える見える、ああ」

(男子学生、部室棟の屋上を見ながら校舎屋上から退出。電話で話しながら)

トッペイ
「……」

(トッペイ、無言で男子学生の見ていた方向を見つめ、電話を取り出す)

画面ブラック。トッペイの声だけが響く。
「もしもし、水道橋?」


続きはシーン7
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