シーン7

携帯電話が鳴り出す部室。
水道橋と智子が日の当たる窓際にいる。
奥のソファーで寝ている他の部員。
水道橋が電話をとって窓のそばにゆく。

水道橋
「へえ、マジ?(窓から半分身を乗り出して)…見えない見えない。
屋上まだ行けっかなァ?…うん。行ってみるわ。うん。智子も一緒にいるから。行ってみる。
お前も早く来いよ。ああ。じゃ」

智子
「なに?」

水道橋
「なんかさ、このすぐ上で自殺するって騒いでる奴がいるらしいんだって。
面白そうだから見に行こうぜ。早くしないと終わっちゃうかもしれないだろ。さ、行こ行こ」

智子(露骨に眉をしかめて)
「あんたねえ、ちょっとフキンシン過ぎない?
ばちあたるよ、そんなことばっかいってると、…大体あんた…」

水道橋(智子をさえぎって)
「むっかしいこと言うつもりないけどさァ。
人間、死んじまったらそれでお終いだと思うのね、オレ。
…残された側の人間がさァ、例えば花そなえたり、鼻くそほじってたりしてもさ、死んじゃった人間にとっては何の関係もないわけでさ。
要するにそういうことなんだよ。
オレたち生きてるでしょ?
生きてて、それなりに幸せで、そんだけじゃなくすげえ、バカでさ。
でも、だからって死んじまった人間に遠慮して、かしこまってる理由にはなんないと思うわけよ」

智子
「それとこれとは話が別じゃないの?」

水道橋(上着を羽織りながら)
「わかってるって言ったじゃんか。
面白そうだから見に行くだけだよ」

智子
「ばっかじゃないのォ!」

水道橋(智子に指を指す)
「そう。バカ」

颯爽と出て行水道橋。
ばたん。ドアの閉まる音。
ドアの音で部員が目覚めて周りを見渡す。
「アレ?なに?何かあったの?」
溜息をつく智子。

スタッフロールが唐突に始まる。
BGMは有頂天の「サボタージュ」


音楽フェードアウトしてやがてブラックが画面を支配する。
真っ暗な中こつこつ階段を上る音。
やがて分かる。カメラは階段を上る水道橋の視点。
水道橋の独白。落ち着いた声で。

「こうやって自殺も、いつか流行した靴と遺書の悪戯のように
どんどん増えてゆくのだろうか。

つまらない。

そうなったら本当につまらないなと、
フキンシンな僕は階段を上りながら少しだけ考えた。
冗談じゃない。
まったく、冗談じゃない」

足音。
暗い階段に時折差し込む窓からの光。
近づく屋上のドア。
ノブに手をかけるところでフィルムは切れ、画面は真っ白に。

そしておしまい。


以上ギャングエイジエイジブラボーの脚本でした。
実際の作品データとしては、八ミリフィルムで制作。時間は十五分弱くらいです。
制作協力、カレッジライフクラブ。’1998初夏。
学生映画…。
ホント、あの頃は若かったなあ…(とおい目


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