シリーズ。そういうことは猫又さんに聞け!


今回の質問:「なんで夜に爪を切ると親の死に目に会えないの?」

「昔、夜に爪を切ることは、単に縁起の悪いことであったという。その頃、人は親の死に目を看取ることこそ真の親孝行とぞ言いけり。生まれ出でる時は親に見守られ、死ぬときは子に見守られるものこそ人の幸福と言いつたえたり。
あるところに矢太という若者おりけり。
この若者日頃より孝行なれど、薬を買いにでかけた先で酒を飲み、親の死に目をのがしてしまったという。
ほろ酔いにて帰宅し、親の死を知った矢太の狂乱これ凄まじく、その涙は畳六枚を湿し、悲しみの声は谷中の鳥を全て飛び立たせたという。
矢太はおおいに嘆いて親の後追わんとし、昼のうちに髪を切り整え、夜のうちに爪を切って、朝には冷たくなりけり。
その時より、不運にして親の死に目に会えなかったものは己の不孝行を嘆き、矢太のようにあとを追うことは出来ぬまでもせめて、と、夜に爪を切って親の死を悲しんだという。

時流れ、後世の者、夜に爪を切ることと親の死に目に会えぬこと、因果を取り違えて伝えたり。
さすればこれすなわち、迷信と覚え置くべし」

「猫又さん、物知りなんですねー」

「すべて、嘘也。にゃんともはや」

「…うん」


今回の質問:「結婚式のライスシャワーって、どういう起源なんですかね」

「それすなわち、米国はデトロイドにて最近始まりし風習也。当時、デトロイドにおいては自動車産業が盛んなれど、日本の安価な製品によって産業は圧迫させられており候。その頃のデトロイドでは、日本製品を購入しない旨を誓約せし夫婦には税制上の優遇与えられしと聞く。彼の土地の日本への憎悪、著しかるべし。
米国にコメを主食とする文化なかりけり、それゆえ米国人はコメと聞かば日本人を想起したり。よって、コメを地に撒き、食えぬようにする行為は日本車を槌にて破壊する行為と似たり。
さて、それゆえ、コメを新郎新婦にぶつける行為はすなわち、ジャパンバッシングと解くべし」

「猫又さん、物知りだなあー」

「すべて嘘也けり。にゃんともはや」

「うん」


今回の質問:「トロくさい」の「トロ」の語源を教えてください。

「さて、北欧の民話に数多く出でるものども、ありけり。それらのものども、力つよけれど、その身のこなし素早いとは言いがたし。頭の回転素早いとは言いがたし。人々、これをトロルと言いけり。
さて、この鈍重なるものどもの申すに…」

「おっ、さては、そのニブい様子から<トロい>ってついたって訳だね!」

「否。早合点は損なリ。黙して聞くべし。…トロルどもの口を揃えるには、鈍重なる生きものと呼ばれること、耐えられぬ屈辱也。そもそも愚鈍なるは人間に違いなかるべし、と彼のものども言いけり。しからば、人どもも言い返して、さにあらず、鈍きはトロルなり、とぞ申して譲らず。
その場に一人の貴族、家来従えて来たりて、トロルこそ最も暗愚な生きものにして愚鈍なるべし、と叫びたり。目を瞑り、トロルどもを嘲ること、げにやかましき。
さて、貴族の目を開きしとき、あたりに家来の姿絶えぬ。トロルどものみになりけり。
トロルの棍棒を振り上げて言うには、汝逃げ遅れぬ、と。
しかしてトロル、この貴族を打ち殺しにけり」

「ふむふむ」

「この貴族、名を<ピエトロ>といいけり。
そののち、人々は身の程をわきまえぬ行いをピエトロくさい、と表現し、それの縮まって、トロくさいと変わりぬ」

「……ピエ…トロくさい…?」

「猫又さん、物知りだなあー」

「…おっ、ヲベロンさん、ばかじゃねーのっ!」

「にゃんともはや」


今回の質問:「HUB(ハブ)って、どういう意味?」

「さて、久しく出番のない身ゆえ、そろそろ人の口に登ることも稀になり、やがて記憶の奥底に沈み、このまま朽ち果てしか、あるいはそれもまた世の定めとて静かに余生を送りける身どもに質問とは、また格別の物好きなり」

「 猫 又 殿 の よ う な 大 妖 怪 が 斯 様 に 気 弱 で は 困 る 」

「嬉しいことを。貴君、異国の妖怪にしてはなかなか見どころのある」

「 ゆ く ゆ く は 小 娘 ど も な ど 追 い 出 し て 、 我 々 の 世 を こ の 電 脳 に 」

「うふふっふ、うふ。にゃあ。なんとも気の大きい」

「あの、質問…」

「 黙 ら っ し ゃ い !」

「ひっ」

「客人よ、その者はその者で職務ゆえ罪にゃかるべし、捨て置くことこそ寛容なり」

「 し か ら ば 」

「さて、HUBとは何ぞや。その語源は日本語にあり。HUBとはすなわち「ハブ」であり、マムシ亜科ハブ属に属する蛇どもに相違にゃかるべし。なにゆえこの名が集線装置の愛称として使われるようになったかというのは実は、ハブどもの生態の由縁なり。
ハブどもの習性、まことに奇妙なるべし。蛇ゆえ、日頃は群生を良しとせざる者であるが、ひとたび雨季来たらば、彼らこぞって坂下り、一つの道に集まれり。
これ転じ、沖縄においては分岐が集束する道のことを「ハブ道」と表現せりものなり。
おりしも第二次大戦終戦直後、電子計算機の開発者の一員であり、後のHUB装置考案者たるアーサー・キンレイ博士は当時、沖縄占領軍の軍曹をつとめおり。のちの博士の自伝によれば、在日中に目撃せしハブ道の光景余の心に強く刻まれり、と言いけり。
それゆえ、遊び心で己の集線装置にハブと名付けしものなり」

「猫又さん、物知りですねー」

「汝、己をあわれ、と知るべし」


今回の質問:「フレー、フレーの語源を教えて!」

「にゃあ」

「わっ、画像でかっ」

「身どもも人気取りに躍起ということなりや」

「あ、元に戻った」

「ともあれ質問に答えようとぞ思う」

「あ、はい、お願いします」

「これすなわち、ガンダムシードなり。フレイ、フレイなり」

「ソーネ!」

トップに戻る

地下室に戻る