しばらく休憩してから、ドックの方へ出かけることにした。
静かな管制棟の中を、ぺたぺた歩く。
初夢さんとトオマワリは、付き合っているのだろうか、と少し思った。
初夢さんがトオマワリの事を好きなのは知っているけれど、トオマワリが彼女のことをどう思っているかは判らなかった。
トオマワリも、初夢さんが思うのと同じように、彼女のことを好きだといい、と思った。
けれど、よく判らなかった。
二十代後半の男性一般が何を考えているのか、というのも、想像するに困難なことではあったが、それ以上にトオマワリの考えていることを推し量るのは骨が折れた。
香弥子なんかは、不可解は魅力なり、というけれど、初夢さんも同じように思っているのだろうか。それとも、初夢さんにはトオマワリの考えていることが判っているのだろうか。
想像してみたが、あたしにとって不可解は、不可解でしかなかった。
大体、初夢さんとトオマワリが付き合うとして、どちらが年上でどちらが歳下ということになるのだろう。見当もつかなかった。
ぼんやりしているうちに、真瀬のことを思い出した。
どうして真瀬のことを思うのか判らなかったが、とにかく思い出した。
不可解、という繋がりで思い出したのかもしれなかった。もしかしたら、恋愛、という繋がりで思い出したのかもしれなかった。
「真瀬か」
今はヒューヴのことに精一杯で、真瀬のことまで心に留めておくのは無理だと思ったけれど、少しだけ彼の事を考えた。
もしも。
もしもあたしが真瀬のことを好きになるとしたら。
それは、真瀬があたしの事を好きだから好きになるのだろうか。
それとも、そういうのとは関係なしに、好きになるのだろうか。
なんだかよく判らなかった。
両方とも、少しずつ違う気がした。
大体、真瀬があたしのことを好きなのかどうかだって、はっきりしていないのだ。
「わからないことばかりだ」
玄関から発着路に出て、あたしは呟いた。日差しが眩しかった。
判らなかったから、考えないことにした。
あまりぐずぐず考えるのは止めよう、と思った。
目の前にあるのは現実。現実しかないのだから、現実だけを見て生きよう、と思った。
腕時計を見ると、そろそろ昼を回る頃だった。