DEATH NOTE
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「────竜崎。コレやるよ」
捜査本部のホテル内にあるLの部屋にきしな、そう云ってライトが竜崎に向かって
放り投げたのは、手の中にすっぽり納まるサイズの、
およそ竜崎には似つかわしくない・・・・・可愛いクマのぬいぐるみ。
「・・・・・・・・コレは?」
何なんですか? 何のつもりです? と二つの問いかけをにじませて、
上目遣いにそう尋ねるL。
当然、ライトはその問いを敏感に察して、肩をすくめると簡潔に答えた。
「別に。特に意味はないよ。 学校からの帰り道、女の子にせがまれて
UFOキャッチャーしたら、たまたま余分に取れただけ」
「そうですか・・・・・」
ライトの言葉をどう受け取ったのか・・・表情の読めない竜崎からは、
その心境は読み取れない。
それでも、ジッ…とクマのぬいぐるみを見つめるLに、少しからかうような口調で
ライトが言葉を続ける。
「何? 何か他の言葉を期待した?」
「・・・・・・・・・」
「例えば・・・お前のために買ってきたんだよ、とか、云って欲しかった?」
「・・・別に」
「そう? ならいいけど」
クスクス笑いながらそう云って、ライトは着ていたジャケットをハンガーにかけると、
Lの座っている長ソファの側に近寄って行く。
「まぁ実際、そのクマ。捨てるのもなんだし・・・って思って、持って帰ってきただけだし」
「そうですか」
「それに何となく、このクマ。お前に似てるだろう?」
「私に似てる・・・・?」
「ああ。その濡れたようなまん丸に黒目の感じが、特に」
「そう…ですか・・・?」
そう云って、再び己の手の中にあるクマをジッ・・・と視つめるL。
ライトの目の前には、可愛いクマのぬいぐるみと視つめあう、膝を抱えたいい歳をした
男の図・・・・・という、傍から見たら随分奇っ怪な光景が展開されている。
奇っ怪すぎて・・・・・少しばかり可愛い、と 笑みがこぼれてしまうくらいには。
だからライトは、そのままLの座っているソファの前へと歩を進めると、
まるでLの頭をヨシヨシと撫でるように、クマの頭をくりくりと撫でてみる。
「───なかなか可愛いだろう?」
「そ…う、ですね」
「でも、竜崎の方が可愛いかな」
さらり、と告げられる言葉。
一瞬の沈黙。
「それは・・・・・・・私のことが好きって事ですか?」
クマから視線を上げて、ライトをジッ…と見ながら尋ねるL。
相手をジッ…と視つめるのはLのクセの一つだ。
まるで心の奥を見透かすように視つめるLの視線に、ふいライトはLの視線を避けるように
クマごとLをその胸の中に抱きしめると、Lの耳元で囁くように呟いた。
「もし、そうだと僕が言ったら・・・・・竜崎はどうする?」
END1
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「それは・・・・・・・私のことが好きって事ですか?」
クマから視線を上げて、ライトをジッ…と見ながら尋ねるL。
相手をジッ…と視つめるのはLのクセの一つだ。
まるで心の奥を見透かすように視つめるLの視線に、ライトはLの隣に腰を下ろす事で
その視線を避けると、Lの質問答えるかわりに、反対に質問を返した。
「竜崎は、どう思うの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
また、沈黙。
今度は少し長め。
相変わらずLはポーカーフェイスで、何を考えてるのか、その表情からは読み取れない。
それから少しして、Lは思い切ったように口を開くと、
「実は私、好き……という事が、よく判らないんです」
「ふぅん」
抑揚のない、不可思議な相槌。
まるで、そう───怒ってでもいるような。
「───竜崎らしい、答えだね」
「私らしい・・・ですか?」
「ああ」
ライトはそう頷くと、
「竜崎がちゃんと考えて答えてくれたから・・・じゃぁ、僕もちゃんと答えないといけないね。」
そう云ってライトは黒いLの瞳に、自分から視線を合わせると、しっかりと響く声で言った。
「オマエナンカ、キライ ダヨ」
「!」
「─────なんて、ね?」
「・・・・・酷いです、ライト君」
「竜崎?」
「何だか今、すごく胸が痛いです。苦しいです」
クマを片手に抱いたまま、ヨレヨレのシャツの胸元を押さえて、Lが心持ち黒目を大きくして
ライトへと訴える。
こんな時ばかり、Lが口にする言葉は、いやに素直だ。
素直すぎて・・・・その言葉の裏を疑ってしまうほどに。
「・・・・・・・ゴメン。悪かった、竜崎。」
「ライト…くん?」
ふいに、クマごとライトの胸の中に抱きしめられ、Lが戸惑ったように月の名を呼ぶ。
「でも・・ねぇ、竜崎。」
「ハイ?」
「もしかしたら、それが好きって事かもしれないよ…?」
「ライト君・・・?」
「何故なら僕も、ついお前に意地悪をしたくなるくらい───」
そうしてLの耳元で、微かに聞こえたライトの声。
「・・・・・・同じ痛みを感じているから───…」
END2
fD/w
「私、友達ができたの、ライト君がはじめてなんです」
いきなりLから告げられた言葉に戸惑う。
一体、僕はどんなリアクションを・・・何をいえばいいのか?
よくよく考えれば、この世の生まれてウン十年。
友達いない告白は、結構、衝撃的だと思うのだが。
「・・・そうなんだ。それはよかったね」
とりあえず、そう答えた。
答えにはなっていなかったが、当のL本人も気にしてないようだから、これでいいのだろう。
と云うか、これ以外に何と答えたら良いのか判らない・・・・と云うのが、正直なところ。
「あんまり驚かないんですね?」
「ん…まぁ、人それぞれだしね」
お前をみてれば友達いなさそうだというのは、すぐ分かるよ────と云う言葉は、
かろうじて飲み込んだ。
なのに、Lは飄々とマイペースに言葉を続けると
「それはやはり、ライト君も、私と同じだからですか?」
「何だって?!」
「ライト君も、友達いないでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・」
ズバリ、そう断定して問いかけてくるL。
すぐに否定できなかったのは、心当たりがなきにしもあらずだからか?
こめかみ辺りに流れる嫌な汗を感じながら、それでも僕はなるべく明るく答えた。
「そんなことないさ」
「それは、嘘ですね」
すぐさま、即答のL。 相当の自信だ。
そして、その根拠の素早い回答。
「実はさっき、ライト君のケータイ、みせてもらいました」
「なにっっ?!」
「ライト君のケータイのメモリ。 女の子の名前しかなかったですよ」
「!!!」
この場合、勝手に人のケータイ見たのかよ! とか、お前と僕を一緒にするなよ、などなど
突っ込むところは色々あるが、辛うじて僕の口から出たのは、この言葉だった。
「み、みんな僕の彼女だからな……。僕は恋人しか、ケータイに登録しない主義なんだ」
「そうなんですか・・・・・」
納得したのか、しないのか・・・・・相変わらず読めない表情で、指を口にくわえて頷くL。
この姿は、奇妙に可愛いから困りもの。
少し困らせたいような・・・・意地悪な気持ちになるからだ。
だから僕はLの瞳を覗き込むように、唇が近づきそうな位ワザと必要以上に顔をよせると、
「でも、まぁ・・・・そうだな。特別にお前の名前をケータイに入れてやってもいいよ、竜崎」
ぽっっ。
その瞬間… Lの頬がほんの少し赤くなったのを僕は見逃さない。
「なぁ、今、赤くなっただろう、竜崎。 僕にそう云われて嬉しかった?」
「べつに・・・・」
「嬉しかったんだろう?」
「だから、私は別に・・・・」
「まぁ、いいか」
めずらしくムキになって否定するLに、僕はクスクス笑いながら頷くと
「ここに登録したら、Lはもれなく僕の恋人って事だよ?」
「ラ、ライトくん?」
「わかってる? 竜崎・・・・・」
そう云って、僕はすぐ目の前にあるLの唇を、掠めるようにチュッ…とキスをした──・・・
END3
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