理由

主要登場人物

トッペイ:中途半端な設定のせいで彼になった。もともとは連作ではないのに。
女の子:涼しそうな顔をした小さな女の子。お母さんにはようちゃんと呼ばれている。
お母さん:お母さん。まだ若い感じの、知的な人。


シーン1

比較的すいている電車の中。
午後だろうと思われる緩やかな日光の差し込む車内。
女の子とその若い母親が乗ってくる。
空いている四人掛けの座席に、二人は座る。
向かいの座席にはトッペイがぼんやりと、座っている。
向かい合う彼らを同じ画面に映し、ややおざなりな画面処理で始まる。

お母さん
「菊名の駅で降りるから、その時になったらようちゃん、教えてね」

女の子
「駅、幾つあるの?」

お母さん(ドアの上の路線図を見ながら)
「6…7つ。7個目の駅よ」

女の子はうなづき、お母さんは鞄から本を取り出す。やさしく女の子の頭をなでる

お母さん
「それまでおりこうさんにしてるのよ。お母さんご本読むから、お外でも見てなさい。靴のまま椅子に乗らないようにね」

音楽が鳴り出す。静かな、田園調の音楽。
足をぶらぶらさせる女の子。本を読み始めるお母さん。
けだるい車内。午後はとても気持ちがよい。やがて飽きてきた女の子。
お母さんにちょっかいを出し始めるが、いまいち相手をしてもらえない。
女の子、ふくれるわけではなく、別の面白いことを捜そうとして、
向かいのトッペイに目を向ける。

トッペイ、視線に気付き、少し笑う。


シーン2

トッペイの手にカメラが寄る。彼の手のアップから始まる。
トッペイの手と、女の子の表情。
このシーンにおいてカメラは鋭角的に切り替わる。
視点は全て固定。
音楽は静かにトランス様の物にすりかわってゆく。

右手で左手の小指につながれている見えない糸を引っ張るパントマイム。
右手で糸を引く動作をするたび、引っ張られるように動く左手の小指。
ありきたりのパントマイム。

女の子の顔のアップ。
驚いて、じっと見つめている。釘付けの彼女の好奇心。

やがて、トッペイは小指を落としてみせる。
(もちろんサムチップなどで代用)

女の子の口があんぐりと開く。

続いて、左手首そのものを落としてみせるトッペイ。
(もちろんマネキン手首などで可)

女の子硬直。

硬直している女の子と、その横でページをめくっているお母さん。

帽子を深くかぶりなおすトッペイ。
落ちた手首を拾う右手のアップ。

音楽に合わせてトッペイと、女の子と、カットは小刻みに切り替わる。
スタイリッシュに。悪夢的に。

音楽フェードアウトとともに画面、一面のブラックに。


シーン3

同車内。
うららかな午後。菊名の直前まで電車はきている。
音楽は止んでいて、女の子はつばを飲み込む。ごくり。

不安そうにお母さんの方を、手探りで探り、そでを引く。

女の子(前を向いたまま)
「おかーさん、おかーさんてば」

お母さん(本を閉じて)
「あ、もう菊名なの」

向かいの席に、トッペイの姿はもうない。
いつの間にか。止んだ音楽と一緒に消えたように。

女の子(お母さんの方を向く)
「おかーさん、あのね、いまね、あたし」

プシーッ
音を立てて止まる電車。
ドアの開く音。話を聞く素振りを見せつつ女の子の手を引いて立ち上がるお母さん。
二人は降りる。
閉じるドアを電車内から、しばらく映している。
動き出す電車。
(カメラを元に戻すとトッペイがいる、という演出も面白いかもしれない)


シーン4

菊名の駅。
女の子の前で、しゃがみこんで話を聞いてあげているお母さん。
前髪を払い、お母さんはやさしく、女の子のはなしに耳を傾ける。

女の子(拙い語彙で一生懸命に)
「ねえ、お母さん、あたし手に糸ついてる?手、ぽろってできる?」

お母さん
「…?なあに、ようちゃん?」

女の子
「あたしにもついてる?糸。あのね、この指についてて見えないの。ぽろってなるの」

お母さん(軽く上を見上げて、悪戯っぽく笑う。満足げな表情)
「ついてると思うよ。それは運命の赤い糸って言ってね…」

女の子
「赤じゃないの。透明なの。見えないんだってば」

お母さん
「赤いの。見えないけどね。ようちゃんの運命の人とつながってるのよ。将来結婚する人とね」

女の子
「きょんちゃんにもついてる?糸」

お母さん(苦笑いして)
「ついてるってば。きっとついてるわよ」

女の子
「(少し不服そうに自分の手を見つめている)」

お母さん
「さ、行くよ、ようちゃん」

手を引いて立ち上がるお母さん。改札口のほうへと歩いてゆく。
遠ざかる二人の姿。
女の子はまだ聞いている。
「ねえ、おかあさん、ほんとにほんと?」

どしん
何かが落ちてくるように上からブラック。落ちてくる速度が早すぎる暗幕のように。

ばしん
叩きつけるような音と共に白抜きでテロップ。

「彼女が赤い糸を信じるようになった理由」

流れ込むようにスタッフロール


以上「理由」の脚本。
自分的には満足の行く出来だと思う一品。
撮影計画は何度も持ち上がっているものの、主役の女の子が
見つからずに断念。
可愛い女の子募集(変態みたいですね。反省)
見つかり次第撮影したいと思いつつも。
未撮影。
誰か、お金と人脈のある人、連絡ください。

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