腕におぼえあり!
時代劇と聞かばすなわち勧善懲悪とぞのみ考えたる人、残念ながらまだ世に多くありけり。
これ、水戸黄門の悪しき影響にて候。
青江又八郎においては、藩を抜けし事情ありけり。
藩の陰謀によって許婚の父を殺めし身に、情け容赦のあるはずもなし。
浪人に身をやつし、江戸に逃げ延びれども、青江又八郎の口を塞がんとする陰謀の手によって手練の刺客、次々と彼の浪人に差し向けらるるなり。
郷里に残せし老母と許婚の姿を思いて暮らす浪人の身の切なさや、必ずや落涙を誘うべし。
これ勧善懲悪と呼ぶにあたわず。
又、侍見れば無敵なりけりとぞ考えたる人の多きこと、桃太郎侍などの悪しき遺産なりとぞ思ゆる。
青江又八郎においては、その剣技優れたれども無敵には届かず、刺客と切り結ぶこと数多くあれど、人を殺めることに慣れしむ素振りなしにけり。
これ無敵と呼ぶには遠かるべし。
…身どもも齢幾多重ねて、様々のことに飽き申し候。
日頃すべきことの少なさにただただ昼寝をする日々ゆえ、時代を懐かしむ電影のニャんと魅力的なことか。
見るべし。
とゆーわけで、日記でぷちぷち書いてたやつを一括大まとめしてみました。うでおぼ再放送記念レビュー。
(といいつつ時々あらすじだけなのは秘密です)
あと、僕がずうっと「影足組(かげあしぐみ)」だとおもっていたのは、どうやら「嗅足組(かぎあしぐみ)」というのが正しい様子。
ありゃまあ。
というわけで追加して、何も書いてない回にも記憶を掘り起こして書いてみました。
なんていいつつ、うでおぼ1のあらすじ、ビデオがうまく取れてないので2からの紹介。
しかも最初の辺を見逃してたので、第5話から紹介。
とはいえども、広いネットで「腕におぼえあり」の情報で言うときっと一番多いサイトになったに違いない。うへへへ。
腕におぼえあり2
(第五話/孤剣)
本日は、渡辺徹演じる細谷源太夫様と我らが青江様の友情の回でありました。
とある日。
仕事を終えて帰ってくるはずの細谷様が二日経っても帰ってこない、と細谷様の奥様から相談された青江様。
気になって口利きの相模屋を尋ねてみると、
「大店の娘の警護を引き受けた細谷様が、警護に失敗!屋敷には得体の知れない浪人者の死体がふたつと、娘についていた侍女の死体がひとつ。娘の姿はなく、細谷様も行方不明!」
というちょっと大変な事態になっていることが判明。
相模屋に乗り込んで、「信用して頼んだのにおめーんとこの用心棒は一体どうなってやがんだ(要約)!」と食って掛かる番頭に青江様が「細谷は用心棒としては上等の者」とか何とか言ってなだめて、一緒に細谷様の足取りを追ってゆく、という構成であります。
で、その頃細谷様は、と言えば単身娘を攫った悪党を各所でちょっとずつ斬り殺しながら敵の隠れ家を追い詰めてゆくのですが、無論、多勢に無勢ですから、川べりで深手を負わされてしまうのですね。右足を、ざっくり。
たいへんだ!
で。
馴染みの酒屋の親父(訳あり)にこっそり傷の手当てをしてもらいながら「青江にばかり頼ってはいられんのだ!」と気を吐く細谷様。
カッコよすぎです。
青江様と細谷様は親友なんですが、割と細谷様は独立心が強いというか、いつも青江に助けてもらっているので歯がゆい、という気持ちで一杯な訳なのです。
奥方曰く「ちゃらんぽらんに見えますが、ああ見えて実は自分に厳しい人」というその通り。
「でもそんな傷負って、一人じゃ無理ですよ」つって忠告しようとする酒屋の親父を跳ね除けつつ、奥方にそっと手紙を届けてもらうんです。
内容は「心配これ、無用にて候」。要するに心配すんな!すぐ戻る!みたいな手紙です。
かっこいいなあ!死ぬかもしれないって自覚してんのにこの手紙!細谷様萌え!
で。
その手紙を青江様が一緒に読むのですが、青江様ってば「うむ、そうか。無事だったか、ならば安心だ」とか言っちゃってんの。文面丸呑み。
もうバカ!カワイイ!バカ!ああもう!
で、足に深手を負った細谷様はもう単身どうにかする覚悟で悪党の隠れ家のそばに潜んで襲撃の機会を待っているんですが、そこへ青江様の姿が!
実は娘を攫った連中が身代金を要求してきてて、そっちの絡みから青江様もその隠れ家へたどり着いたのですが、細谷様はそれを見て、びっくり。乗り込もうとする青江様を制止して、
「おい!青江、青江!(声を殺して叫ぶ)」
「…!誰だ!」
「俺だ、俺だ」
「細谷か、どこだ」
「ここだ」
「ここではわからん」
「ここだ(物陰から手を振る)」
「おお」
ここのマヌケなやりとりがスンゲーかわいくて素敵でした。ここではわからん。て。子供かよ。みたいな。
で、その潜んでる納屋の中で二人が会話するんですね。
「…!お主、怪我をしているのか!」
「どうということはない、かすり傷(そんなわけない)だ!」
「水臭いぞ、細谷!」
「しかし、そうそうお前ばかり頼るわけにもいかんのだ!」
「それが水臭いというのだ、細谷!」
「しかし、いつもいつも俺は」
「何を言う!もし俺が進退窮まったら、真っ先にお前をアテにするぞ!」
「青江…!」
キターーーーーーー!
ハイ!今日の名言キター!これ、すごいいい台詞だ。メモっておこう。
青江様は基本的に妻帯者の癖に女にだらしなくて駄目な方なのですが、この辺のところはすごく男らしいのです。
ていうか、この二人は本当に親友なんだなあ。目頭があつくなるぜ。
で、がっちり仲直りした二人は、一緒に悪党の隠れ家に乗り込んで、悪党四人を斬り殺しましたとさ。
そんなストーリー。
*
明日の「腕におぼえあり2」は、なんか大事な書類を持って逃げてるらしい大富静馬(片岡鶴太郎)が「こんな紙切れいつでもくれてやるから俺と立ち会え青江ッ!いいじゃねえか祭りが永遠に続いてもよおッ!」つっておお暴れ。
つーわけで青江又八郎VS大富静馬の雨中の決闘です。
まだ間に合うヨ!
ビデオセットして見るべし!
NHK総合、昼間の二時五分からだよ!
うでおぼ2を見て、僕とうでおぼ2の話しようよ!ねっ!
(第七話/雨中の決闘)
・うろ覚えあらすじ/大富静馬との決闘を制し、連判状を取り返した青江様は、すべての決着をつけるために国元へ向かう。
(第八話/影の首領)
青江様、帰ってくるなり再び謀略に巻き込まれて脱藩!風雲急すぎる!
今度のミッションは、江戸の影足組壊滅を目論む五人の刺客から影足組を守り、刺客を始末したらまた戻ってきて、今度は悪の親玉をぶった切れ、とか言われてる模様です。
一方その頃、細谷様はカバチタレみたいな手口で道場をぶんどられてました。
ぶんどったのは銭屋徳兵衛という名の高利貸しです。全身これ憎しや。
そんでもって、相模屋が得意の商売知識で渡り合う回かと思いきや、相模屋からっきし駄目です。
第一の戦法が泣き落としで、しかも断わられるとショックのあまり寝込むというていたらく。次の手段なし。まったく引出しの少ないやつです。
そこへ我らが青江様が江戸に舞い戻り、話を聞いて大激怒。「そんなやつ、斬ってしまえ!」ともうすごい剣幕。
青江様ってば、自分が理不尽な状況に置かれてるという鬱屈もあって、いつになく理不尽です。
で、ぶんどった道場で銭屋がボディーガードの元相撲とりと二人で「笑いがとまんねえや!」つって酒飲んでるところに青江様がぬう、と顔を出し、「その笑い、止めてやろうか」とぞおっしゃいます。
でもって、木刀でさんざ叩きのめしながら、道場を買い戻す相談など始めるんですが、それがまた。
「十両でどうだ」
「(返事せず)」
「(一発くれて)では九両でどうだ!」
な、なんか青江様、滅茶苦茶なこと言ってるんですけど!何故殴りながら値切るのよ!ちょっと!
「(もう一発くれて)八両!…そら、どんどん値が下がるぞ!」
もはや青江様の目に映っているのは正義とかではなく、怒り、それのみのようでございました。
でもって銭屋も殴られすぎてちょっと脳がおかしくなったらしく、口答えなどしてるのですね。
「六両!」
「ろ、六両三分!(一発殴られる)」
「五両!」
「ご、ご、五両二分…!(さらに一発殴られる)」
「四両!」
…青江様の中に鬼が住んでいらっしゃいます。アワワワ。
結局、最終的にはもはや値段とかどうでもよくなったらしく、ぼっこんぼっこんに木刀で叩きのめしてました。
ありゃあ、一発で一両安くなるとしたら、マイナス20両は行ったな。
つーわけでめずらしく、カタルシスと情念の突出した回でしたね。
第九話/襲撃
本日は、江戸に戻って、前のような暮らしを始めるというお話でした。
細谷様は結局三両二分で道場を買い戻した模様です。
あ、お金払ったんだ、と思ったらちょっと面白かったです。前回の様子では、むしろ金取るくらいの勢いでしたからね。
一方、青江様は再び相模屋に口利きを頼み、ちょっとキツい性格のおばばさまと、その孫娘の警護をするご様子。
死んだババ様の供養のつもりで、とか言いつつ、案外いつもどおりお仕事されています。割とぐうたら系。
で、その頃の細谷様ですが、折角戻ってきた道場も、ハリキリ指導のせいか、弟子が逃げること逃げること。
つーわけでなんだか面白くない細谷様は青江様を誘って昼から、昼酒っ!
この人たちはなんとなく厄介なことがあるとすぐ昼酒です。カワイイ。
でも、会話の内容は割と細谷様と奥方の間のこととか、ちょっと滋味のある会話なのですね。
色々あって由亀さまに去り状を書いた青江様にとっては割と苦虫。お互いに最後は黙ってしまうような昼酒。
案外細谷様と青江様が昼酒かっくらう場面は省略されがちなので、ちょっと貴重な感じでした。
この人たちは、こういうことを話しながら昼間から酒飲んでんのかあ、みたいに。
参考になります。僕も人を昼酒に誘うときはそうしよう。そうしよう。
で、その後色々あって青江様は孫娘を狙う悪党を全員峰打ちで地面にキスさせてミッションコンプリート。
でも、そこでまた孫娘に惚れられている模様っ!
トラウマとかで口がきけなかった娘が、別れ際、「又さん、また、来てね…!」と振り絞るようにっ!
しかも青江様ってば、間違いなく誤解させるような間を開け、誤解させるような笑顔で「うむ、来る!」とかっ!
言っちゃってんのっ!
もうーっ!
とりあえず、青江様の一番の問題点は「自分は女にもてる」ということをまったく自覚してない、ということだと思いました。
考えようによっては、最も性質のわるいタイプです。罪だぜ青江様。
第十話/隠れ蓑
・うろ覚えあらすじ/狂言誘拐を狂言っぽくみせないために、当て馬用心棒として雇われてしまう青江様。案の定隙を突いて護衛対象を攫われてしまいます。
で、結局狂言誘拐にはやむを得ない事情があったことを知り、見逃すのですが、ちゃっかり狂言誘拐で得た利益の半分を要求する青江様が、涼しい顔をしつつ鬼だと思いました。
そして、それを企んだのが夏木マリだとずうっと思ってたんですが、あめくみちこだった罠。
第十一話/妄想
かなりクールな回でしたよ。ハイ。
今回は色々見どころもありましたが、特筆すべきは細川俊之の極変態似合過の巻でありました。
すごいよ。すんごいよ。
寿安保方こと細川俊之が、「昔から人をさいなむお癖がおありにて」との由。手っ取り早い話が極サディストです。
なんちゅーか、ホントに似合いすぎて困るっちゅの。ホントこれ。
そこへ、寿安様方の動向を探る影足組のそのなかでも野心ひときわ、功を焦る桔梗という娘忍者がスタンドプレーで飛び出すわけでございます。
案の定細川俊之に捕まって、さんざ困ったことになりまして次回へ続く!
とりあえず、桔梗の役どころは誰かに似てると思ったんですが、ようやく考え至りました。
こいつ、カツ・コバヤシだ!カツだよ!
まあ、判る人だけ。判れ。
第十二話/一匹狼
前回細川俊之に捕まった桔梗嬢が、あんなことやこんなことをされて廃人にされちまいました。
…。
っていうかーっ!オメー、NHKだろーっ!いいのかよその展開ーっ!
ともかく。
本日は怒り狂った青江様が国元からの刺客をぶったぎります。もう。そりゃあ凄い勢いでぶったぎりますよ。
手傷を負った佐知殿もついでとばかりに剣を振り回します。
やっちまえ!
っちゅわけで明日は最終回。
上役の間宮作左衛門の切腹も迫り、いよいよ絶体絶命の青江又八郎!
わしが進退窮まったらおぬしを真っ先にあてにするぞ、との言葉どおり、細谷様を頼った青江様!
細谷様ととともに細川俊之の野望を阻止できるか!?
とりあえず頭巾かぶって草むらから三人並んで首を出す様子は相当マヌケだぞ青江様!
蟹江敬三一世一代の名台詞「待った!そのお椀のもの待った!」を待て!
第十三話/(最終回)黒幕の死
いやー。カッコよかったです。
蟹江敬三の「待った!そのお椀のもの待った!」がもーずばずば気持ちいいくらいに響いて悶絶。
青江様の女に甘いところもたまらないし!
青江様と寿安保方の殺陣もかなりかっこええし!
青江様と細谷様の仲良しっぷりもすごいし!
すべて終わった後の間宮様たちの面ったらもう!狸っぷりったらもう!身悶え!
生き死にかけて戦って、凌ぎ削って藩を守って!それかよ!カワイイ!
まーともかく、青江様の人間臭さというか、有体にいってしまえば「駄目加減」が魅力的なドラマ「腕におぼえあり」は、来週から第三シリーズが始まります。
暇ならビデオ撮って見ろ!見れ!見よ!NHK系昼の一時五分から五十分までの四十五分ドラマです。
補足:全て終わった後の間宮様たちの狸っぷり、というのは命を賭けて戦った青江様に「五石増」というすごいスズメの涙加増で、その上、藩の財政がうまくゆくまで加増は待つがよい、とのたまった事実を言います。
しかも、青江様がぐっと自分を押さえて退席した後に、間宮様たちが顔を見合わせて「やっぱり怒ったのう」とばつの悪そうな顔をするあたりポイント高すぎ。
ちなみに、佐知殿は「もし将来、青江様が江戸詰めを申し付かった際には現地妻に!」と爆弾発言。さらに「うむ」とか返事しちゃってる青江様。これが今回一番の大問題だと思いました。最終回なのに。
由亀さまにお子が授かったあとだというのに!うわーん、青江様の浮気者!
腕におぼえあり3
第一話/又八郎再び
・うろ覚えあらすじ/いきなり由亀さまが殺害され、青江又八郎脱藩。話が全然読めません。嗅足組の刺客から逃げて、山道を怯えながら江戸へ走る獣のような青江様。折々に挿入される「どうしてこうなってしまったのか」と振り返りつつの日常風景。
藩を牛耳り始めているとある家老を諌めようとした若手藩士たちの相談に乗っていたこと。
公儀隠密らしき行き倒れの公儀隠密から、なんだか知らないけれどたくされた謎の暗号文。
藩主に直訴しようとした瞬間からなんだか知らないけれどサクサク殺されてゆく若手藩士たち。
さらにはどうしてなのか判らないけれど青江様の屋敷に賊が押し入り、由亀さまが殺されます。
何がなんだか判らないうちに、一人息子を用人に預け、脱藩した青江様。
そして江戸に辿り付くころには、吠え掛かった犬をにらむと犬が逃げるような、獣のようなぼろぼろの風体で辿り付く青江様。
風雲急でございますぞ!
第二話/再会
・うろ覚えあらすじ/相模屋にたどり着いて、ぶっ倒れる青江様。相模屋に助けて貰って身支度など整え、江戸で頼るべき人を訪ねたり諸々のことを。
というところで、どこかの藩に仕官した筈の細谷様が戻ってきていることを知る青江様。
しかも、なんか飲んだくれて死ぬほどダメなオッサンに成り下がってます。聞けば、勤めていた藩が「松の木一本」を巡る隣の藩とのゴタゴタからおとりつぶしになって、職にあぶれ、それ以来全てに無気力になってしまった模様。
これまた不可解、理解できないと思っているうちに、夜の道で佐知さまとも再会。
でも、再会するやいなや佐知さまに斬りかかられる青江様。素で命狙われてます。
わしが何をした!何をしたというのだ!
いや実際見ててその心の叫び、痛切すぎて苦しいです。青江様。
第三話/笹舟
青江様が、幼女を毒牙に!ひとつ布団で!「こっちにおいで」って!
たたたた大変だ!
というかそれはともかくとして、うでおぼ3は、悲しさが全体的に漂ってます。お、大人向けだあコレ!
青江様は今回、藩を牛耳ってる家老(悪)に意見しようとした若者たちの面倒を見たせいか、はたまた行き倒れの誰かから無理矢理押し付けられた妙な暗号文を受け取ってしまったせいか、それとももっと他に理由があるのか、ともあれ由亀さまを殺され、息子とも離れ離れになって、挙句、影足組に命を狙われながら江戸に逃げる羽目に。
江戸で再会した細谷様は一時期仕官していたものの、お家取り潰しに伴って現在再び浪人の身、さらに飲んだくれて働かなくなって駄目人間を極めてるし、佐知殿は佐知殿で、影足組と青江様との立場の間で板ばさみで大変だしもう、なんていうか大変です皆。
そして、何より一番厳しいのは、なぜ由亀様が殺されなければならなかったのか、由亀様を手にかけたのは誰なのか、誰が味方で誰が敵なのか、すべて「わからない」ということなのですね。
細谷様も、佐知殿も、驚き、悲しみ、それは何故なのだと青江様に尋ねるのですが、青江様には「わからん」と答えるしかないのです。
妻を殺されて、目をかけていた若者も殺されて、息子とはなればなれになって、藩を追われて、命を狙われて、それなのに、どうしてこうなってしまったのか判らない、と答えるしかない青江様の苦渋たるや。
目が離せませんコレ。
第四話/武士の魂
・うろ覚えあらすじ/ダメになった細谷様の世話を焼いてくれていた若い浪人がいます。
名を、初村賛之丞。
物静かにて、思慮深く、清廉な浪人ですが、やはり彼にも事情がありました。
彼、仇持ちだったんです。
幼馴染でお互い好き同志だと思っていた女性が、同僚のいやなやつと祝言。
それがどうしても理解できず、彼女の気持ちを確かめて、もしそれが彼女の望まない結婚だった場合、一緒に脱藩して逃げようという決意を固めて、その同僚の家に乗り込んだ初村でしたが、折り悪くいわゆるナニの真っ最中。
襦袢姿の彼女と、はだけた寝巻きのいやな同僚の姿を目にしてしまった初村賛之丞は激情に駆られ、二人ともを斬り殺して逃亡。
そして今に至る次第なのであります。
その過去を隠し、己を責める故か己のことには必要以上に質素で、己の幸福よりも細谷様一家の幸せを願う日々の彼でしたが、今回、彼を仇と狙う同僚の遺族一団と遭遇してしまいます。
ダメ人間の癖に血の気だけは相変わらず多い細谷様が「そいつに手を出すならわしが相手になるぞ」とずいと前に出ますが、それを初村殿は静かに制止するんです。
そうして、敵討ち一行四名を相手に、斬りあう初村賛之丞。
彼の腕ならば全員返り討ちにも出来た筈なのに、刀を振り下ろす腕が止まること数度。その隙をついて背後から足をすくわれ、背中を斬られ、なし崩しに斬られてしまいました。
今際に「細谷様の家族が好きだった」と言い残して事切れる初村賛之丞。
敵討ちの証人として藩邸まで来て欲しい、と、初村賛之丞を殺した一行に求められ「いやだ!わしはいやだ!」と大泣きする細谷様。
それを青江様がきつい言葉で説得。「おぬしが初村殿にしてやれることはなんだ!」と。
なけます。ていうか泣きました。悲しすぎる。どうしようもないからこそ、やりきれなすぎる。
二人は初村賛之丞を乗せた戸板を持って、彼の生まれた藩の藩邸へ歩くのでありました。
そして、初村殿の存在がいかに大きかったかを知る細谷様。
相模屋に土下座までして、初村殿の仕事を引き継ぎ、鬼の形相で曲者を倒す細谷様。
斬りあいの中で細谷様から、汗とともにダメ成分が蒸発してゆくのです。
ことの終わりと共にぺたん、と膝をつき、細谷様は空を仰ぎます。
細谷様は生まれ変わったのでした。
第五話/陰謀
今日の青江様は、とうとう奥様を殺した悪の黒幕に見当をつけ、鬼の顔で「あいつぶっころす(意訳)」と決意や固く。。いつか倒すべき敵の姿を見つけ、生きる目標を見つけた青江様。目に生気が戻ってまいりました。
そして。
今までの鬱憤を晴らすかのように細谷様と二人で、やくざものを素手でぶんなぐって立てなくしておりました。
いわゆる、決意の現われで血祭りというやつですか青江様。ガタガタ。
第六話/過去の男
・うろ覚えあらすじ/角野卓三がなんかおおあばれしてて面白かった気が。
なんか、悪者の護衛をしなければならないような目にあっていたおぼえがあります。
昔ものすごい悪い金貸しだった角野卓三が、相変わらず悪いやつだったので切り伏せるような。そんな感じ。
第七話/対決
・うろ覚えあらすじ/ダメな昔の男が、相変わらずダメだったとか、そんな話だった気が。
お父さんが悪い女に騙されてるらしいののでどうにかなりませんか、と相談されて調べてみると、その悪い女は年増の女で、無論、裏には悪い男がついていて、さあどうしようと。
そういうわけで青江様と細谷様でその女の住処を調べあげ、依頼主と一緒に話をつけに行くと、そこにいたのはなんと。
何年か前に出て行ってしまった依頼主の母。
つまり、お父さんの元妻。
ギャー。
という修羅場を潜りました。
そして、行きつけの飲み屋の女将の昔の男が「オレは真人間に戻ったんだ、だから三十両都合してくれ」といかにも怪しげな感じでやって来てます。
でもって、調べているうちに、今度は先ほどの「悪い女についている悪い男」がそいつであることが判明。
ギャー。
という修羅場でした。世間は狭い。
第八話/疾風
(未見)
第九話/浮草の女
・うろ覚えあらすじ/佐知殿が、青江様とくっつきかけたり離れたり。江戸嗅足組を裏切ったお順を斬り捨てた佐知殿のやりきれなさも結構大きいものがあって、由亀さまを殺したのが自分と同じ嗅足組だ、だとか色々そういうのが重なって、青江様のそばにはいられないような気になってしまったり、でもそれでも、と女心揺れたり。
ちなみにお順役の人はかないみかで、声がアニメ声だったのがちょっと面白かったり。
第十話/それぞれの道
公儀隠密の密書の内容を解き明かしてみると、それはどうやら酒井主税の汚職をばっちり暴くものだったモヨン。
でもってそれを手に、国へ戻ることを決めた青江様。というのが前回のあらすじ。というか、佐知さまと色々ひっついたりはなれたりと悶着があったのですが、まあそれはそれとして。
ともかくも最終回は悪の黒幕、筆頭家老酒井主税に、ちょっとした罠をしかけての逆落としみたいな感じです。国に戻った青江様は、しばらく渡辺裕之のもとに身を隠し、酒井家老の悪い噂などを流しながらじっと時を待つ訳ですね。
で、噂はやがて藩主の耳にも届くわけで、藩主に酒井主税こと峰岸徹が尋ねられることに。
「酒井、その悪い噂は本当なのか?」
「いえ、滅相もない」
「そうか」
追及終わり。残念。藩主はまだ若い小僧なので浅はかこの上ないのですね。
ですが勿論それだけでは終わらないわけで、隣の家老が「しかし、これだけ噂になるということはやはりなんらかの根拠があるのではないかと申す者もおりますし…」とかごにょごにょと。
その、一見うっかりともとれる発言に、峰岸徹シンパの家老たちは一斉に気色ばんで、
「失礼であろう!酒井様を疑っておるのか!」
「いえいえ、私が申しているわけでは御座いませんで」
「じゃあ誰が申しておるのだ!」
「だから、そう申す者がおるというだけの話でございまして」
「だったらその者をつれて参れ!」
「いえ、少々事情のありますものゆえ…」
「それ見ろ、言えないではないか!うそつきめ!」
「つれて参れ、とおっしゃるのであれば、つれてまいりますが」
なんつって藩主にお伺い。藩主がうなずいたらば、奥のふすまがすぱあん、と開いて、そこにいるのは白装束の青江又八郎ですよ。
「あ、青江!む、謀反人の青江ではないか!」
「だから、事情のある者だと申したではありませぬか」
「ぐぬう」
萌えた。久々にいい間合いの釣りを見ました。コレ。
でもって峰岸徹は青江様の追及に逃げられぬと観念してその後、切腹。(公式には病死と発表)
そういうことになって、青江様の藩への復帰も認められます。
となると残るのは影足組頭領、近藤正臣扮する石ノ森佐門です。
酒井主税は何も言わずに切腹した訳ですが、実際影足組を使って工作をしていたのはこの石ノ森佐門。ほうっておくわけには行きません。しかし、こやつも切れ者との評判どおり、峰岸徹が死んだと聞くや否や行方をくらます次第。
黒幕を仕留めてから残党狩りに移行、というのは実際の手順としては自然でもドラマとして珍しいと思いますがともかく。
江戸へ取って返す青江様と佐知殿の前に、とうとう石ノ森佐門が姿を現すわけです。
谷口権七郎の死因はまことに病死かと問う佐知殿に、穴の底から響くように「…毒殺」と答える石ノ森佐門。その声や凄絶。でもっての長い決闘。
「おれは、影足組を光のあたる場所に出したかった!胸を張りたかったのだ!」
そして、じりじりと間合いを詰めつつそれを語る石ノ森佐門の鬼気迫る表情ったらないです。笑ってるわけはないのに、笑っているような表情。まさに鬼気迫る。化け物のよう。手に汗。飲む息。
この決闘は見ごたえがありました。まったく。かっこよかった。痺れた。
ありえるかありえないかと問われたらもう絶対ありえない戦いだしありえない結末(具体的に言うと、刀を跳ね飛ばし、垣根に追い詰めて転倒させた青江様にとどめを食らわそうとしたところに雷が落ちて石ノ森佐門憤死)だったんですが、痺れました。かっこよかった。
そして、戦いは終わり、各人のその後について。
細谷源太夫:いつぞや初村賛之丞が仇討ちに倒れた回で知り合った人に仕官の口を持ちかけられ、承諾。甲斐の方面へ。娘の祝言の場での「娘を御頼み申す!」にはヲベロンもらい泣き。
細谷文:細谷様について甲斐の方面へ。「生きてさえいればまた会えますとも」となんとも心強い別れの挨拶を。かっこいいなあ。この人ほんとかっこいい。
細谷美沙(美人の娘):中居くんと祝言。あいかわらず泣き顔や困り顔が美人。相手が中居くんというところに一抹の不安もありますがきっと幸福になることでしょう。
相模屋吉蔵:店をたたんで娘夫婦のところへ。これからは孫と遊んで暮らすとのこと。でも孫になつかれそうな感じじゃないよね、この人。
佐知:影足組は将軍交代による社会情勢の変化から解散へ。生きる意味を見失って放浪。(す、すくわれねえ!)
そして、ラストシーンは江戸から国元に戻る青江様を、まるで待っていたかのように茶屋でお茶を飲んでいた佐知殿と、彼女に気付いて足を止める青江様との会話でした。
「しばらく、気ままに暮らしてみとうございます」
「…そうか」
「もしいつかわたしが国元に戻ることになって、そしてその頃まだ、二人とも一人身でしたら…」
「…」
「また、こうしてお茶など、飲みましょう」
「うむ」
ああ、最後は滋味のある会話だったあ。