レビュー。

影絵座刊行物


青のむこうに

(1999/8/13)(TRPGリプレイ)

鈴虫さんに「これはねえ、売れなかったんだよー」と前もって語られたので、少しそういう先入観を持って読みました。
うまく表現できないのだけれど、なんだろう。
これが小説のように書かれていたら、きっと膨大な量になったのだろうなあ、とか思いました。
読みながら、頭の中で小説に作り直す感じ。
だから、このセッションはきっと、「小説を何人かで作り上げる感じ」というのに、とても近いスタイルなんでしょう。

あとがきの中で語られているように、これはRPGではないやもしれません。
僕は不勉強にしてこの話の原作であるという「安房直子」という児童文学作家の方を存じ上げませんで、原作との関係やリプレイのオリジナリティーについて述べることが出来ないのですけれど。

インターネット上の日記、個人サイト、そういうものと同じように、TRPGのリプレイというものは要するに書いた人や書かれている人に興味があればとても面白い、そういうものなのではないかなあ、と思いました。
無論文章のおもしろさ、着眼点の愉快さなど、色々とセールスポイントがあるのは確かですが、結局そこにたどり着くのかもしれない、と、そんなことを思いました。

鈴虫さんはこういうことを考えている(正確な時制では、いた、かな)のかあ、と思いながら読んだので、僕はこのリプレイ、割と面白く読ませていただきました。

ただ、一つだけわがままを言うと、これを小説にしたものが読みたかったなあ、というのはすごくあるのですね。
無論原作(のようなもの)がすでに存在しているとのことなのでその願いは難しいものかもしれませんけれど。
サウンドノベルのような。
そんな感じ。

とりあえず安房直子さんの児童文学のほうも、いつか読んでみようと思います。


ゼロ・ワン

(2001/12/29)(小説)

サイト上でもすでに公開されている小説です。
シャドウランというTRPGの世界観を共有した小説。
僕は「シャドウラン」を知らないので、まったく外部からの感想になります。

しかし、何と言ってもやっぱり登場人物の「エコ」に限ると思います。
ハードの中のウェット。非日常が日常になる主人公と対極に、日常を日常として求めるエコ。
ほとんど出番のない彼女がやっぱり一番気になりました。行間、ていうのかなあ。
主人公と脇役の関係性というか、主題というか、そのあたりがそれに違いない、と思ったのです。
続きが読みたい。
というとちょっと違うかもしれませんが、エコがその後どうなったのか、やっぱり読みたいです。
具体的には後述しますが、頂いた三冊には一貫した主題がある、と僕は勝手にも思い込んでいるので、その意味で言っても、エコの話が読みたいのです。

しかし、横書きで読んだ小説を縦書きで読み直すというのはまた不思議な感覚でありました。
どちらかというと僕は縦書きの方が好きかもしれません。


白い傷

(2002/8/10)(小説)

こちらも同じくしてシャドウランの世界観に立った小説。
今年の新刊だそうです。
堅川橋を発端にして起こる事件を描いた探偵小説ですが、特筆すべきは僕がこの小説の舞台となる堅川橋へ、先日連れられて行っているということでした。
僕は酔っ払ってぱったりと地べたに倒れ、鈴虫さんは四文字を川に向かって叫んでいました(確か)。
僕が地べたから見上げた高速道路の裏側は、確かにどこかで見たような、そんな景色でした。
街灯に照らされて白けたような橋と、夜の夕焼けのようにネオンを映す運河。

やはり小説を読むときに大事なのは雰囲気なのですね。
最初の三行、とよく言いますが、三行を読む前にすでに雰囲気に入っていたお陰で、あまり細かいことを気にせず読ませていただきました。

「青のむこうに」の主題ととても似ている台詞を「ステレオ」のオーナーが呟いたあたりで、ようやくそれがこの小説のテーマではないかと思い当たりました。
そう思いながらゼロ・ワンを読むと、また違うものがあったりして、良かったです。
三作通読して、色々な「その形」を受け取りました。主題があるって、強いです。

ただ、主題とは別に、物語の後半が少し急ぎすぎた感があって、読みながら物語の筋を追うことで手一杯になってしまったのが残念でした。
雰囲気を楽しませるためには、もう少しゆったりと、急がず物語を進めてもよかったのではないでしょうか。
「ステレオ」を後にする場面あたりまでのテンポはとてもよかったとおもいます。

是非次回作にも期待したいと思います。なんて言うとちょっと偉そうですけれど。でも。


ヲベロン拝